天然ガス発電と原子力発電の比較
国内試算による建設費用・廃炉費用
発電方式 | 建設費用 | 廃炉費用 | 合計費用 | 空間的負担 |
---|---|---|---|---|
原子力発電(政府試算) | 約2,600〜5,500億円 | 約750〜1,000億円+核燃料管理費 | 約3,350〜6,500億円以上 | 地層・地上に封印された領域 |
天然ガス発電 | 約1,000〜1,400億円 | 約100〜200億円 | 約1,100〜1,600億円 | 短期廃棄物管理 |
海外における実際の原発建設費用
原発名 | 国 | 出力 | 実際の建設費 |
---|---|---|---|
オルキルオト3号機 | フィンランド | 160万kW | 約1.7兆円(当初の3倍) |
ボーグル3・4号機 | 米国 | 各110万kW | 約4.4兆円(2基合計)=1基あたり約2.2兆円 |
フラマンビル原発 | フランス | 約160万kW | 約2.1兆円 |
ヒンクリーポイントC | 英国 | 2基 | 約5.8〜6.4兆円(1基あたり約2.9〜3.2兆円) |
天然ガス発電と原子力発電の安全性・費用比較
これらの事例から、1基あたり2兆〜4兆円の建設費は現実的な範囲といえます。
2. 使用済み核燃料の逼迫と制度的沈黙
- 国内の貯蔵容量は約8割がすでに満杯。
- 最終処分場は未定、中間貯蔵施設も限定的。
- 使用済み核燃料は人が近づけば即死するレベルの放射線を放つ物質。
- 保管施設が攻撃されれば、原爆以上の被害が出る可能性。
3. 電気代の表象と実態の乖離
発電方式 | 表面コスト | 実質コスト(処理・廃炉・事故対応含む) |
---|---|---|
天然ガス | 約14〜15円/kWh | 約14〜16円/kWh(廃棄物管理が短期) |
原子力 | 約10〜12円/kWh | 約30〜50円/kWh以上(使用済み核燃料・廃炉・事故処理含む) |
- 福島第一原発事故の関連費用:
- 水産業者支援基金:300億円
- 漁業者支援基金:500億円
- 廃炉・除染・賠償:26.2兆円規模
4. 温排水の実情
- 原子力温排水は、取水時より7度高い冷却水が1秒間に70トン流れ出している。
- 世界約400基の原発で計算すると、1秒間に28,000トンの温排水が海洋に放出されており、地球温暖化への影響は否定できない。
- 老朽化した原発では、第一次冷却水と第二次冷却水が混入している可能性が高い。
蒸気タービン・発電機と復水器との関係(模式図)

出典:原子力安全技術センター『定格熱出力一定運転温排水資料』
5. 老朽原発と温排水の放射性汚染
- 冷却水混入により、トリチウム濃度が異常に高い原発も存在。
- 放水先の川や海に放射性物質が流出する可能性。
- 福島第一原発の処理水放出は30年以上継続予定。
- トリチウムは吸入・飲料水・食物から体内に入り、細胞内の水分と置換されDNAや細胞膜に接触。
- 通常は数週間〜数ヶ月で排出されるが、高濃度を継続摂取するとDNA損傷や細胞変異のリスクが増加。
- トリチウム濃度が高い場合、セシウム濃度も高い可能性があるが、多くの原発ではセシウム測定が行われていない。
- 日本の原発ではセシウム134・137を定期測定しているが、他国では測定されていないのが実情。
- セシウム134・137もトリチウムと同様に体内に取り込まれると被ばくを引き起こし、長期的には発がんリスクを高める可能性があります。両者は性質や体内での挙動は異なりますが、いずれも継続的な摂取や高濃度被ばくは健康被害の要因となり得ます。
6. 結語:制度的遮断を超えて、倫理的記録へ
原発は安価であるという制度的な演出の裏側には、身体に蓄積される放射性物質と、空間に封印される廃棄物が存在し、それらは世代を超えて記録され続けます。それにもかかわらず、なぜ原発を使い続けようとするのでしょうか。 原発は決して、安価で安全な電力ではありません。使い続ける理由は何か――この問いは、政策構造そのものに対して倫理的な再設計を促すものです。
参考・引用
- 原子力安全技術センター『定格熱出力一定運転温排水資料』
- 原子力資料情報室「海水等の放射性セシウム濃度測定報告」
- 電気新聞「Q5. トリチウムは体に悪い?」
- 読売新聞「中国の複数原発がトリチウム放出、福島『処理水』の最大6.5倍」
- 中央日報日本語版「トリチウム、フランスのほうが多く排出?」
コメント